薬膳とは中医学(中国伝統医学)の理論をもとに、目的をもち、効果を得るための食事療法です。
ですから生薬使った料理=薬膳料理ではなく、スーパーにならぶ食材だけの組みあわせでも立派な薬膳と呼べるものなのです。
その薬膳のもとである中医学とは、数千年の長い歴史のなかで豊富な臨床経験から理論がうまれ、その理論にもとづいて治療をする。
この繰り返しにより発展しつづけ、現在まで受け継がれている医学です。
その中でも、心と体は一体であるという認識は、すでに古代からもっていました。
そのため、心の問題(過度な精神刺激)が体内のバランスをくずし体調不良をまねき、病気へと発展する。
また、体内のバランスがくずれ働きが悪くなることにより、負の感情をうみだしやすくするという見方も、実際に膨大な数の人間をみてきて導きだされたものです。
このような視点をもちながら対応してきたのが中医学の特徴のひとでもあります。
この講座の‟ストレスから身心まもる食生活”の「身心」は「健全な精神は、健全な肉体に宿る」という、この考えをふくめたものです。
中医学は「整体観念(全体でひとつ)」という考えにより、人の体も各臓腑・組織・器官は、それぞれ違う働きをしているものの、すべてが密接に関連し、助けあうことで正常に働けるものだとしています。
例えば、この関係性に「陰陽五行説」をくわえれば、ストレスで食欲不振になる、胃が痛いなども、実は当たりまえのような症状とも言えます。
あるいは、ストレスによい食品を摂っても効果を感じられないのは、ほかの臓腑の働きが弱いために必要な栄養として作用しきれていない可能性もあると考えられるのです。
どれか1つの臓腑の働きが弱ければ、いずれ必ず全体へおよぶため、中医学はその関係性を考慮しながら前もってフォローをしたり対処をしていきます。
中国の唐の時代に著名な医者・薬物学者である「孫思邈(そんしばく)」が‟飲食物には邪気をはらう作用がある。また気血をうみだすことで臓腑を安定させ、意識を高揚させ、気持ちを明るくさせる作用がある”と残しています。
もちろんストレス軽減するためには、食事、薬膳(中医学)だけでは解決できず、精神面への働きかけが必要です。
ただ、思考クセへの働きかけや改善は、口で言うほど簡単ではなく、相応の時間がかかることは私自身も経験しております。
ご存知のとおり、ストレス緩和は複数の方法を取りいれることで、ストレスが減った効果を実感できます。
ストレス緩和に役立つ方法のひとつである食生活。
薬膳だけがイイ!というような固執した考え方ではなく、薬膳の知恵も取りいれることで、食生活そのものの対応幅が広がり、緩和にむけてのサポート効果が高まると捉えていただくと良いと思います。